先生、僕を誘拐してください。


「どうしたの?」

冷房が効いているから、もう暑さが引いた。
夏なのに、全く暑くない。落ちていく。

敦美先生が私に大学を押すのは、私の為じゃない。
蒼人に大学推薦あげたいから、姉である私にも進めておこうって、そんな魂胆なんじゃないかな。
気付いてしまった途端、あの暑苦しい先生の面談が急に白々しく見えた。
先生って、大人だからそんな汚い部分を上手に隠して私に接しているんだろうか。

「就職先、私を知ってる人が居ない場所が良い」
「あはは。めっちゃメンタル弱ってるっ」

真由は笑い飛ばして元気を出させてくれようとしたけれど、私の気持ちが回復するのは難しい。

お昼ごはんは、放課後部活がある真由に半分以上捧げてしまったのだった。



午後は、眠くなるようなお経を聞いているような古典の授業で、私は肩肘ついて眠っていた。

数学は、二年まででほとんど授業は終えていて、三年からは過去問を解く作業。お陰で、五限目はプリントをひたすら解くだけ。おかげで空を飛行機が飛ぶ音さえ聞こえてくるような静けさの中、シャーペンがプリントを叩く音と滑る音を聞きながら眠れた。


「武田」

睡眠も確保されあとは帰るだけだった私を呼ぶのは、敦美先生だ。

「なんですか?」