先生、僕を誘拐してください。



どうやらマスクをして喋れない奏は、私と朝倉くんのただならぬ空気を感じ取ったのか、私たちの間に蒼人を投げ入れてくれたらしい。

そのまま自転車も朝倉君から奪うと、押していく。

「姉ちゃん、真面目に自転車学校まで持って行ってるの? 下に皆隠して停めてるんだから、そうしなよ」
「あんた、いっつも自転車で帰ってくるのに坂では歩いてると思ったら!」
「俺の話はあとでいいよ。ほら、奏が自転車持って去っていくよ」

話を逸らされてしまったけれど、確かに奏がさっさと自転車をもっていくので追いかけるしかなかった。

私と蒼人を見て黙ってしまった朝倉くんを、睨む。

「もう話しかけないで」
「え、姉ちゃん、だれ? 元彼みたいな?」

「馬鹿じゃない。あの人、生徒会長だよ」

振りかえらず、朝倉くんを置いて奏を追う。

「あー、あね。そう言えば父さんの葬式に全校生徒代表ってやつで来てたね」

「そう?」