先生、僕を誘拐してください。



「音楽か家庭科か、美術の選択科目あるでしょ、俺それで美術選択してるよ」

「じゃあ上手いのか」

「まあ、先生たちが全力で止める程度には下手だよ」

じゃあなんでそっちがいいの、と聞こうと思って辞めた。

きっと朝倉一の中では色々と葛藤があったはずだから。


「てなわけで、面接だけで高い授業料を払えばだれでも入学できる専門学校だから俺、時間あるんだ」

「そう。その授業料の為にバイトでもしたら?」

「だから、生徒会の方少しだけ顔を出そうって思ってる」

にこにこと、それはそれは人の良さそうな、悪意のない爽やかな笑顔で言われた。

その笑顔を向けられて、露骨に嫌そうな顔をしてしまう人って私ぐらいかもしれない。

「なんでわざわざ私にそれを言うの?」


「なんでだろう。……なんでかな」

首を傾げる朝倉一に、私はもう隠す必要もないだろうと拒絶を前面にだす。

「姉ちゃん、退いてーっ」

私と朝倉一が睨んでいたのは、本の数秒だった。
が、その数秒の間に、なぜか私と朝倉一の間に蒼人が飛び込んできた。

「いってー。まじむかつく」
蒼人を投げたのは、奏だった。

「……奏なんかに投げられてるなんて情けないぞ」

「なっ あいつ、意外とマッチョなんだ。脱いだらヤべえって。脱がせようか」

「止めて」