「渋滞してたから、駅まで走ってきた。病院、病院いこ、病院、あの、あっちの病院って病院」
うわ言の様に『病院』を繰り返しながら、急に大粒の涙がこぼれ出した。
「蒼人?」
「父さんと母さんが乗ったバス、潰れてた。車に突っ込まれたって、車に乗っていた運転手がまだ救出されて、なっ」
「蒼っ」
「お、俺、手、振っ、た。父さんたち、前の、ほ、乗ってた」
うわあああと崩れ落ちた蒼人が私の手を掴む。
すると蒼人の学校の先生が単車でやってくるのが、まるでスローモーションのように見えたのは覚えている。
そのあと、真由に引きずられながら病院へ向かった。
病院の入り口に、マスコミやテレビ局がうろうろしていて、怖かった。
ぼーっとして、両手足が自分のモノじゃない様な、感覚。
息をするのも怖かった。息をしているのかさえ分からなかった。
ただ、蒼人が号泣するので、それだけが現実を突きつけてくる。



