即答に思わず苦笑する。真由らしい。
「じゃあ奏も来ればいいよ。じゃあね」
『ああ。着いたら連絡するよ』
お父さんは電話を切ったので、私も真由に詳細を伝えた。
「ここで待ってたら、弟たちのバスが来るらしいよ」
「じゃあ皆に会えるじゃん。待ってよっか。向こうにさ、可愛い雑貨屋できてたよね」
「あ、筆箱新しいの欲しいな」
「行こう行こう」
真由と雑貨屋で筆箱を吟味し、中をうろうろした。
二階まである大きな雑貨屋だったので、気付けば16時をとっくに過ぎていた。
「美空のお父さん、遅くない? 駅から競技場って10分ぐらいだよね」
「なんか混むかもって言ってたから、渋滞してんのかな」
確認すると、バスターミナルの前で電子版に時刻表が映し出されていたけれど、どこも10分から30分も遅れていた。
「こんなに遅れてるって、なんか事故でもあったのかな?」
二人で電子板を見上げながら首を傾げる。
「姉ちゃん!」
その時だった。
何も持たずに、汗だくになりながら転がり落ちるように走ってくる蒼人。
人ごみを掻き分けて、私の顔だけを見てただひたすら走ってくる。
蒼人の顔は真っ青だ。
「どうしたの?」



