私の手をすっぽり包むと、人差し指で私の手をなぞる。
「な、なに?」
すすーっと触られて、驚いて手を引こうとしてけど掴まって解けない。
反対の奏の手が、テーブル越しに伸ばされて私の思考は停止した。
何をしたいのか分からず、思いっきり頭突きをして突き飛ばした。
「ったぁぁ。石頭!」
額を押さえて睨むと、テーブルに突っ伏していた奏が私を怨めしそうに見上げる。
「なによ。文句があるなら喋ってみなさいよ、ばーか」
べーっと舌を出して両手をヒラヒラさせると、額を押さえたまま奏が立ち上がる。
やば、回り込まれると思ったら、ナイスタイミングで蒼人とお母さんが戻ってきた。
「やっべー。めっちゃお湯熱かった」
「設定温度弄ってたみたいねえ。あ、明日は奏くんのお父さんがお寿司買って帰ってくれるんですって」
蒼人がさりげなくお母さんの手を持って歩いていて、私たちの馬鹿みたいな行動が余計に幼稚に見えた。
「はーあ。やっぱ喋らないと、アンタが何考えてるか分かんないわ」



