先生、僕を誘拐してください。



「知らないの? 著作権が切れてない曲を学際で演奏するとややこしくなるんだ。だから、著作権が切れてる作品を探してみたの」

「ふうん」

六月の空、夏、一日をさまよいましょう。
知らない人はいない名曲だった。けど、私はどうもピンとこない。
多分、奏が乗り気じゃないからかもしれない。

「あ、私も貴方に聞きたいことがあったんだった」
「なに?」

脈絡もなく話を変えても、朝倉一は嫌な顔を一つもしないで聞き返した。
その顔が、なんだか作られたかんじで私は好きになれない。

「奏。一年の清水奏。生徒会に入ったの?」

段ボールを勢い余って破って契ってしまったが問題ない。捨ててしまおう。
が、私の質問に彼は大きく目を見開く。

「何、その顔」
「や、幼馴染みなのに知らないんだなって」
「なんで私たちが幼馴染みって知ってるの」

昨日ぐらいまで、私はこの朝倉一とまともに話したことはなかったはずだ。なのに、なんでそんな話をしてくるの。

「まあいいわ。ストーカーだとしても身の危険がないならいい。で、生徒会に入ったの?」