真由は私の隣で歩き出すと、ポーニーテールにしていた長い髪をほどき結び直す。
後ろを振り返ると、ようやく坂の始めにジャージ姿が見えてくる。
真由はそれぐらい差を広げて独走しつつ、私に気付かれず奇声をあげる元気があったわけか。
「聞いてるの、美空」
「聞いてるよ。でも、進路指導って言っても、うちは弟が一年生に入ったばっかだし、お父さん死んじゃったし。大学に行けるわけないのにね」
先生、私に気が合って進路指導室に呼びたいだけじゃない?って冗談で笑い飛ばしても、真由の顔は暗くなる。猫みたいな大きな目を細めて、気まずそうだ。
中学からずっと一緒だから、今の私の状況を一番わかっている。
だからこれ以上言えなくて、黙ってしまったんだ。
「まあ就職先は決めてないから、それに対しては指導されるべきかね」
「おい、邪魔だぞ、ブス」



