段ボールを思いっきり蹴って潰しながら、邪魔だなあと正直に言う。私は本音と分裂しなくても、困らない性格だと自負している。
「いやあ、学際の話。さっき合唱部の子たちと会ったから話したら、ジャズにしようかって言ってたし」
「……生徒会引退した後も、そんな風に気にかけてくれるなんて、優しいね」
嫌味のつもりで言ったつもりではないのに、口から出た言葉は思いっきりトゲトゲしていた。
自分でも、自分の心の墨が吐き出されて様で驚く。
「あはは。武田さん、怖っ。でもまあ、ごめん。武田さんを気にしてんのは確かなんだ」
「……敦美先生に頼まれた、とか?」
「ううん。なんか危ういじゃん。いつの間にか、消えちゃいそうなほど、ふわふわしてる」
そう言われてなんて答えていいのか分かる人は少ないんじゃないかな。
少なくても私は、全く嬉しくない言葉にどう反応していいのか分からなかった。
「歌う人が居ないなら、ジャズ演奏でいいじゃん。ムーンライトセレナーデとか好きだよ。月の光の下、夏の空、歌う一輪の薔薇、とか歌詞が素敵じゃん」
「……なんで朝倉くんの好きな曲を弾かないといけないの」



