先生、僕を誘拐してください。



 うちの学校は原則バイト禁止。私も特別に学校の指定しているスーパーの、しかもバッグヤードでの仕事しかできない。
お惣菜を詰めたり、在庫を確認したり、値段を張ったり、段ボールを潰してまとめたり出来ることは少ない。
けれど、やらないよりは全然良かった。

「武田さん」

外で、汗を拭いながら段ボールを潰していたら、声をかけられてしまった。
爽やかな笑顔の、元生徒会長朝倉一だ。
バッグヤードのさらに裏は、川に面した小さな小道があって、そこに段ボールが山ほど積み重なっている。
こんな場所、スーパーから来ないと入れないのに。

「なんで、ここにいるの」
「ここ、親同士が仲が良くてさ。俺が探し出したバイト先だよ」
「……それはどうも、ありがとうございます」

スーパーの経営者と親が仲良しって、この人は家が金持なのかな。
そう思ったら、心の距離がぐっと開いたような気がする。

「何かよう?」