「行ってやれよ、キャプテン命令」
「いけいけー。部員命令」
部長と蒼人を睨みながらも、奏では入口の方へ向かう。
私も少し遅れてついて行く。
「あ、アドレス、知りたい?」
振り返って、キャプテンの村田くんとやらに聞いてみる。
「まじっすか。うわー。でも奏にバスケ部辞められたら困るからなー」
「あっそ」
じゃあいいかとそれ以上言わずに奏の後を追う。反応が面白くない。
奏みたいに慌ててくれたらきっと喜んで教えてたのにな。
「……ッス」
急いで向かった先で、奏が首に手を当てて低い声で何か言っていた。
手を首に当てるのは、恥ずかしいからとか、面倒だとかそんな様子。
二年の女子4人に囲まれても、頭一つ出ている奏の顔を見て、追いかけるのを止めて立ち止ってしまった。
首を振る。横に小さく振っている。それは、合唱部への勧誘を断るものだったと思う。
でも私は、その奏の男の子みたいな横顔に息を飲んでいた。
奏って、こんなに綺麗な横顔だったっけ。
鎖骨とか骨ばった手とか、なんか、ごつごつしてる。
……男の子だ。いや、最初から男の子だったんだけど。
なんだろ。男の子になってる。



