知らない、男の人みたいなちょっと掠れた低い声。アルトよりも低かったかもしれない。
嘘。男の子ってそんなに急激に低くなるものなの?
「あはは。奏がいっちょまえに怒ってる。あいつ、昔っから姉ちゃんをからかう奴には容赦ねえよなあ」
「え?」
「今、背中向けてたから姉ちゃんは見てないだろうけど、わざと当ててたよ」
蒼人がにやにや笑って、奏の背中を見ている。
ということは今のボールは私の為に投げたのか。
なんだ、ちょっと可愛いところもあるじゃない。
ふふっと笑っていると、体育館の入り口に女の子たちの影が見えた。
合唱部の二年の子たちだ。
「奏、ちょっといい?」
「……」
「入り口で可愛い女の子たちと、ちょっと話しあいましょうよ」
にやにや私が言うと、露骨に嫌そうな顔をして振り返ってくる。
「あ、合唱部の未来ちゃんたちだ。奏を勧誘?」
こんな時だけ鼻が効く蒼人に殺意が沸く。
頷いたあと、奏の様子を見る。
黙って難しそうな顔をしている。



