だから、驚いた。
自分の部屋のドアを開けたら、奏がいたので驚いた。
不満そうに頬を膨らませて私の顔を見るや否や、言葉を放った。
『美空ってば、朝倉一と付き合ってるの?』
窓辺のカーテンが、ふわふわと舞う。
その中心で、消えそうなほど真っ白で、ポロポロと泣く奏を見て私は持っていたジュースを落した。
男子が泣くのを見るのは珍しいし、幼馴染でくそ生意気な奏が泣くのは珍しいし、何より奏なら弟と一緒にさっきまで一階でゲームをしていたはずだから。
私の目の前に現れた奏は、カナリヤの様な美しいボーイソプラノで本音を語る。
『嫌だ。今まで美空の近くに朝倉一の影なんて居なかったじゃないか』
「ちょ、え……? ちょっと待って」
零れたオレンジジュースが、空の満月みたいに床に広がっていいく。



