先生、僕を誘拐してください。




走馬灯のように私の目の前に現れた映像は、景色が変わる。


大きな音とともに、私の耳に飛び込んできた声は、そこにあるはずじゃない言葉。
『お父さん!』

お母さんの声が聞こえてきた。

学校じゃない。私が見ているのは学校じゃなくて、揺れるバスの中だ。
何回も何回も回転しながらぶつかって速度が遅くなっていく。

座席に足を挟まれたお母さんがお父さんの名前を呼ぶ。

それなのにお父さんは微笑んでいた。

微笑んだお父さんを見て、お母さんが泣いていた。



『君たちを傷つけたまま残して逝ってしまうことを許してほしい』

お父さんの声が聞こえた。
少し低い声。奏が声変わりした直後みたいな、うまく調整できない声。
震えて泣いているように聞こえた。



『美空』

お父さんが泣いている。お父さんの声が泣いている。

『奏くんのマスクの下は、笑っていたかい?』

どういう意味だろうか。

『美空に嫌われたくなくて必死な彼と、お父さんがお前たちより先に死んだせいで美空の未来を奪おうことになって……かなしかったんだ』