先生、僕を誘拐してください。





空はすっかり青く染まり、チカチカと間抜けに星が光っている。
満月なんて、落ちてきそうなほど大きく存在をアピールしていた。

「あ、噂の姉ちゃんが帰ってきた!」
うちの高校は普通科なのでバイトは禁止。が特別に学校側の指定する場所だけでバイトの許可を貰っていた私はバイトから帰宅した。
そして玄関で奏の靴を発見したのと、弟がリビングから顔だけ玄関の方を覗くのは同時だった。

「何、噂って」

「えー、奏に聞けよ。こいつがさー」

にやにや気持ち悪い蒼人を押しのけてリビングに入ると、テレビの前に様々なゲーム機が散乱していた。奏は私がリビングに入ってきた瞬間、顎にずらしていたマスクを口にひっぱり、此方を見ようとしなかった。

「美空、お帰り。ご飯もうすぐよ」

お母さんが足を引きずりながらキッチンを移動している。
それなのに手伝いもしない弟たちに、腸が煮えくりかえりそうでテレビの電源を引っ込むく。

「あのねえ、お母さんの手伝いを少しは」
「したし。今日のカレーは俺たちが作ったんだけど!」

蒼人が私からコンセントをひったくり、また差し込む。

なんだ……。手伝ったのか。

「美空、ちょっとお皿取ってもらっていい?」