いつの間にか私より大きくなった奏の、両手の中に飛び込む。
奏にならこんな風に簡単にできるのに。
「先生、ね。先生」
「ならなくてもいいけど」
「なにそれ。さっきからアンタさあ、言ってることおかしくない?」
反撃しようとしたら、私を抱きしめる奏の手に力が籠った。
私の肩に、くてんと奏の頭がのっかって重みを感じる。
「俺、美空より二歳も年下なのが昔からすげえ嫌でさ。年だけはどうしても変われないだろ」
「そうだね」
「中学も、高校も、一年だけしか同じ校舎に居られねえんだ。追いついたと思ったら美空はさっさと去っていく」
「そうだねえ」
「大学なら二年一緒の大学に入れられるとか、そんな安易な考えで美空を大学に進学するのを進めている理由もあるんだけどさ」
意外とそんな本音も言ってくれるわけか。
でも奏のその理由は、自己中だと笑い飛ばすことはできない。
一年で別れてしまうのは皆、いやだろうし。
「奏は何になりたいとか、あんの?」



