「なんで」

「敦美先生と、指導の仕方について真っ向から喧嘩してくれそうだし。先生ってピアノ弾けるし。--あと教え方上手いし」

先生が皆、ピアノがうまいわけではない。少なくても敦美先生は絶対違う。

「どうするかなんて、別に死にはしないんだから一番楽しいことでいいんじゃねえの」

「極論」

「少なくても俺は今はそう。美空の傍にいれるだけでいいし」

……なんか今日はやけにぐいぐい来るじゃない。

「弱ってるときって付け込みやすいと村田くんが言ってた」

村田くんを師匠にするのはやめてほしい。

「じゃあ弱ってる今、やさしくしたほうが、奏はおいしいんじゃないの」
「うん。美空も優しくされたがってるから、それでもいいんだけど、でもそれは少し違うから」

「なにそれ」

それでも、フラフラとさ迷いつつも奏のいる体育館を求めた私をもう少し理解してくれないかな。

フラフラしている人が、学校の坂をわざわざ上るわけないじゃん。