先生、僕を誘拐してください。



「なんで!? ちょっとひどくない!?」

挙動不審なほど慌てる姿に笑ってしまったが、確かにその通りだ。

だからマスクして離さなくなったとき、少し心が痛んだ。

でもちょうど私もやさぐれてた時期で、触れてほしくない部分がいっぱいあったから強く言わなかった。

「村田くん」
「ほいほい」
「村田くんたちは、どっちから告白したの?」

脈絡もなく尋ねたのに、照れもせずに村田くんは自分を指さした。

「あんな文学少女、俺からガツガツ行かなきゃ、じいさんになっても両想いになれません!」
「そーゆうとこは男らしいのね」

ほめていいのかわからないけど、ほめておこう。

「ありがとうございます! てなわけでマネージャーを」

「三者面談があるのでまたね」

夏休みに入ろうとしているのに、就職も決まっていない三年生をマネージャーに誘うとは、村田くんは本当に大物だった。


家までの道を、セミとじりじり焦がす太陽の光を浴びながら帰る。日陰を探しながら帰りたいのに、見つからない。おかげで家に帰りつくころには背中は汗で張り付いていた。
呑気に家に帰ると、既に靴が玄関に置いてあったのには驚いた。

うちのお父さんより全然大きい。
靴を覗くと、28センチと書いてあってさらに驚く。

「美空、帰ったの?」