「あー、良かった。俺だけじゃないんだ」
ドアをスライドして入ってきた人は、私と敦美先生を見比べてクスクス笑う。
「敦美先生、熱くなりすぎてから回ってますよ。で、一緒に話して大丈夫?」
「えっと。でもあんたって」
ポカンと大きく口を開けて、入ってきた人を眺める。
サラサラの黒髪が音もなく揺れて、知的さに箔をつける黒縁の眼鏡。
この暑い日に、首まできっちりボタンもとめられてる。
私は普通科のクラスだったから一度も一緒になったことはないけど、特進科で首席で、生徒会長だった朝倉一(あさくら はじめ)くんだ。
いつも生徒会でバタバタしてたり、昼休みは机に付して眠ってたり。
でも人望があるのか人が周りに居る人だ。
「えーっと、就職組?」
「ううん。専門学校行きたいって言ったら、担任が敦美先生に俺を回して来たの。酷いよね」
クスクス笑いつつも、当然のように隣に座られ、少し椅子を離す。
ちょっと距離が近い人だ。



