先生、僕を誘拐してください。



適当にクローゼットから引っ張ってきたワンピースを着つつ、なんだか落ち着かなかった。


それは村田くんも一緒なのか蒼人が帰ってきて数分後に電話。

これは、彼も部活が終わってすぐに電話してきてくれたに違いない。

「もしもーし。青の姉でーす」

『もしもーし。こちら、スーパーのおばさんたちにマスコミレベルで追及され、疲れ果てた村田です』

げんなりした声に思わず笑ってしまう。

「気になって仕方ないんだけど、話って何?」

『あー、戸締りは大丈夫? すっげシークレットなんすよ』

なんで今頃敬語なの、と思いつつも開け放たれた窓は、カーテンだけにした。

そして大丈夫だよ、と答える。

『なんか妙に奏が、朝倉くんに敵意向けてる気がしたから、その知ってるかもしれないけど』

「うん」

『思い出させて申し訳ないんだけど』

言いにくそうにごにょごにょ言っているが、スパッと言ってほしい。

「何よ」
『噂、とかなかったんだけど、知ってるの多分俺だけなんだけど、その』

覚悟を決めたのか、スピーカーの向こうでごくりと喉がなる。

『蒼人たちの父さんが亡くなった事故、あれ。バスにぶつかって亡くなった人、朝倉くんの塾でバイトしてた人で――多分』