「おめでとう御座います。今日から貴方様は審神者です。」
「……は?」


いつも通りの日常を終え、我が家の扉を開けた先に待っていたのは奇妙な狐だった。
顔を朱塗りし、目が異様に大きい。
お世辞にも可愛らしい、とか愛らしい、とは感じられぬ相貌。
その口から発せられた声は予想以上に甲高かった。

「ですから、貴方様は今日から審神者となり、御国の未来を守る任についていただきます。異論は認めません。」
「いや、ちょ、ちょっと待ってください。まず、審神者ってなんですか。御国を守るって言っても何から?」
「詳しい説明は追々。それでは参りましょう!」
「はーー!?!?」

あれよあれよという間に黒塗りの立派な車に乗せられた。
バタン、と目の前で扉が閉まり頭が真っ白になる。
これはいわゆる拉致ではないのか…?

「それでは説明させていただきますね!私の名はこんのすけ。2025年からきたクダギツネで、審神者の皆様のサポートをさせて頂いております!」
「こんのすけ…」
「そして貴方様に戦って頂くのは歴史修正主義者と呼ばれる者達です。彼らはこの日本の歴史を改変しようと目論む輩です。」

あたふたしたていても仕方がない。
ここは状況を把握するほうが先だ。

「歴史を改変って…そんなこと出来るんですか?」
「可能です。未来の技術を用いて時間遡行が可能になっているのです。」
「へぇー…」

すごいな、とは思うがいまいち現実味のない話だ。
そもそもなぜぼくが審神者?に選ばれたのかもわからない。

「なぜ、ぼくなんですか?」
「貴方様が受けられた健康診断の中に審神者の素質を測定するものがあるのです!審神者に必要な霊力が備わっている人をそれで選定します。」
「れいりょく…」

まるで自分とは関係のないような話だ。