「ギャアアアアアアッ!!」
 その声に、目が覚めた。悲痛な叫び声がそのまま反響して響いているので、きっとトンネルや洞窟かなにかなのだろう。その証拠に、瞼からいつも透けて見える強い光は見えなかった。
 瞼をあげて、視界に入った景色に硬直する。なにせ、来た覚えもないような薄ぐらい洞窟の中だったのだ。あちこちに水晶の柱が立っていて、162cmという自分の高校1年生にしては低い身長も、軽々と抜かしていた。
 (こ、ここは、どこ、?)
 その時、ズキンと頭が痛む。左手で押さえたが、痛みは治まるわけもなく、痛くなるだけだった。キィィィンと、耳鳴りもして、不吉な予感がした。
 周りを確認しようと立ち上がった。頭痛と耳鳴りが増して、右手も使い、とにかく頭を押さえた。
 「た、助け、_くれぇっ、!」
 どこからか先ほどの悲痛な叫び声と同じ人物であろう、助けを求める声が聞こえた。その声を聞いた途端、頭がズッシリと重くなったかと思うと、痛みが消えた。
 「なんでお前なんかを助けなきゃなんねぇんだよ?」
 ノイズがかった声がそのあと、同じもしくは近くの場所で聞こえた。言葉はわかるのに、声がよくわからない、そんな声。
 おかげさまでその場所の発見が早まった。その場に居たのは、地面に崩れこんでいる、紅く濡れた服を着た男と、それを見下すように立っている、刀を持った誰か。おそらく、地面に崩れこんでいるのが助けを要求した主で、見下しているのがノイズがかった声の持ち主だろう。
 パッと見ただけでわかる異様な空気に、気付かないはずもなく、岩影に隠れて様子を観察することにした。
 ノイズ声の持ち主は、深く被った黒いコーディガンのフードの中から、笑ったのがわかった。ヒィィと声をあげ、地面に崩れこんでいる男が後ずさった。
 よく見ると、その男は白い服が紅く染まっていた。そして、それが左手に集中している。何が有るのか見ようともしなかったが、男が動いたせいで、その左手が見えてしまった。否、左手だったもの、だろうか?それは、骨ごと切られて、消えていたのだ。
 (な、なに、これっ__!)
 思わず吐きそうになり、口を押さえる。何故今まで気付かなかったのだろうか、辺りには血の臭いが充満していた。鼻で息をする度、気持ち悪さは増してきて、喉のすぐそこまで嘔吐物が上ってきてしまう。
 「お前は罪人だ。その罪は死んでも晴れねぇだろうよ」
 ノイズ声の主は、黒いブーツをコツコツならしながら、左手の無い男に迫った。そして、右手に構えた刀を振り上げた。
 「お前は、殺人鬼を怒らせた。それは重大な罪、あいつを殺そうとするものは、死刑だ。」
 ブンッと刀がさがり、ザクッという人間の切れる音がした。そのせいで血の臭いが益々強くなり、吐き気が増す。
 (なんで、なんでこんなことに__!!)
 なんで、また、自分の目の前で、人が死んでしまうのだろうか?なんで、また、自分は人を見殺しにしてしまうのだろうか?