1×1=1



"位置についてーーーーー



揺れる陽炎にも劣らない張り上げられた
顧問の声



" パァンッッッ


ピストルが鳴り響く。
その音が僕の耳に届く前に
隣のレーンの影は風をきって前へ進む


はっとして僕も動きだし体を前に傾ける


風に乗って届くシャンプーの香り


どんどん どんどん
着実に
加速していく

凛々しいその後ろ姿が近づいてきた。

あと少し。あと少し。