「一回、三百円。やるの、やらないの、お兄さん。」

 鼻の下に髭をはやした屋台の主人が、声をかける。

「じゃぁ、一回。」

 そう言って、遼は、三百円をおじさんに、渡した。

「頑張って!」

 彼を応援する私。自然に、両手が、拳になる。

「あっ、その赤いの。」

「やっぱり、こっちの黒いの。」

 そう言っているうちに、一匹の小さな赤い金魚が、吸い込まれるように、ポイに乗り、その瞬間を、彼は逃さず、素早く、お椀に入れた。

「よっしゃー。ゲットー!」

「遼、すごい!」

 喜ぶ私たちは、もはや、小学生だった。