「人が、増えてきたな。」

「うん。」

「はぐれるなよ。」

 すれ違う人たちと、時々、ぶつかりそうになりながら、遼くんに、ついて行く。
 それでも、少しずつ、二人の間は、開いていった。

「り、遼くん。待って。」

 遼くんは、振り返って、私を待ってくれた。
 そうして、決心したように、私の手を握った。

 初めて、手をつないだ。
 温かい、大きな手。

 心臓が、ドクンドクンと波打って、つないだ手から、彼に伝わってしまいそう。