俺のポケットの中にある小さな赤い箱を

彼女に渡す日が来た。


彼女はまだ、知らない。


驚いてくれるだろうか?

喜んでくれるだろうか?

もしかしたら泣き出すだろうか?


やっと俺は林檎にプロポーズする。


2年前、留学する林檎にしようとしたが

しなかった。


あの時には、約束だけで充分だと思った。

林檎を空港に送ったあの日、

あの時も俺のポケットにはこの赤い小箱が

入っていた。


やっと活躍する時がきたな・・・

そうつぶやいて赤い小箱をつついた。



林檎が賞を取った今日、きっと一生忘れることの

ない日になった。


一通りの挨拶やらが終わって

舞台を降りた彼女。


キョロキョロと周りを見回している。


俺を探している。


そのことはすぐにわかった。


俺も彼女へとゆっくりと向かう。


彼女はまだ、俺に気付いていない。