美容師は自分の天職だって思ってる。

カットして気に入ってもらった時の

その人の目を見ることがうれしかった。

逆の時ももちろんある。

ちょっと曇った目を見ると

自分はまだまだだなって思う。



納得してもらえるまでやりたいが

大抵、お客さんの方が折れてしまって

帰って行く。

その瞬間はたまらなく辛い。



でも、また来てくれた時の喜びは

とっても大きくて・・・

今度こそ納得してもらえるように

がんばる。

だから美容師はやめられない。


なのに、親父は俺からはさみを

奪うようなことをした。


美容師の親父に憧れて、美容師に

なったのに、もぅずっとはさみを握ってない

親父は経営者になっていた。



俺に与えられたのは取締役という

堅苦しい肩書きと、雑務だった。

お客さんとの時間よりも

なんだかわからない会議の時間ばかりに

なってしまった。

親父1人で大きくしたこの美容院は

今や家族経営の枠を超えて

まだまだ、大きくなるだろう。

近いうちにまた、店舗が増えるらしい。