東京恋愛専科~または恋は言ってみりゃボディブロー~

「よろしかったら、私のをお貸ししましょうか?」

そう言った私に、
「えっ?」

老人は訳がわからないと言うように聞き返してきた。

「確か、1000円くらい残っていたと思いますので…」

私はカバンから財布を取り出すと、マナカを老人に差し出した。

「えっ…いや、そこまでしなくてもいいですよ」

差し出されたマナカに老人は戸惑っている。

「いいですよ、どうせ1年半くらい使ってないですから。

このまま財布の肥やしになるよりも、マナカも使ってくれた方が嬉しいと思いますから。

あっ、名義に関しては大丈夫ですよ」

そう言った私に、
「…じゃあ、お言葉に甘えて」

老人は呟くように言うと、私からマナカを受け取った。