「ねえ、次に会う予定はないの?

会社では会わないの?」

ナオが身を乗り出して聞いてきた。

「もう会わないわよ。

1回だけ、それも顔を見るだけだったんだから。

ましてやただの派遣社員の私が副社長と会社で会う訳ないでしょ」

そう言ってナオを論破すると、ガトーショコラを口に入れた。

「えーっ、何よそれー」

ナオは落ち込んだ様子を見せると、椅子に腰を下ろした。

「あーあ、ようやくつづりに恋が訪れたかと思ったのにー。

最後に恋をした大学3年生ぶりの恋がやっときたかと思ったのにー」

「あー、はいはい。

焼きたてのブルーベリースコーンが冷めちゃうわよ?

いらないなら私が食べるけど」

「はい、食べます!」

ナオは思い出したと言うように、皿のうえのブルーベリースコーンを手に取った。