東京恋愛専科~または恋は言ってみりゃボディブロー~

「あっ、しまった」

その声に視線を向けると、1人の老人が改札の前で立っていた。

老人は「すみません」と謝りながら次の人に改札を譲ると、その場から離れた。

「あー、困ったな…」

老人はブツブツと呟いて、定期入れのような入れ物から1枚のカードを取り出した。

「どうかしましたか?」

私は老人に歩み寄ると、声をかけた。

「あっ…実は、マナカのチャージを忘れちゃって残金が後少ししかないんですよ」

老人は申し訳なさそうに言いながらマナカを私に見せた。

「チャージでしたら、あそこにあるコンビニでできますよ?」

私は近くにあるローソンを指差した。

「でも、これから急ぎの用事があるからどうしても早く戻らないといけないんです」

老人は参ったなと言うように人差し指で頬をかいた。

「あー、お急ぎですか…」

どうすればいいんだろうと思っていたら、私にある考えが浮かんだ。