東京恋愛専科～または恋は言ってみりゃボディブロー～

「つづりさんは両親が飲食店を経営していらっしゃるんですよね？」

「飲食店と言っても、小さなうどん屋ですけど…」

呟くように返事をした私に、
「今度、食べに行ってもいいですか？」

副社長が聞いてきた。

「えっ、食べにですか？」

それって、家にくるって言うことですよね！？

「ダメですか？」

副社長が首を傾げて、私を見つめてきた。

おおっ、それはない…。

ほろ酔い気味の潤んだ目が見つめるその様子は、まるで子犬のようである。

そんな顔で見つめられたら、
「…ダメ、ではないですよ」

首を縦に振って、返事をするしか他がありません。

自分の容姿に気づいているのか気づいていないのかはよくわからないんだけど、イエスと言ってしまいそうになるからやめてくれ…なんて、相手が相手だからとても言えない。