東京恋愛専科~または恋は言ってみりゃボディブロー~

意外と、それもあっさりと彼の名前を呼べたことに自分でも驚いた。

気があってると気づいたからかな?

「そうです、その調子です」

私が名前を呼んだことに、副社長は満足そうに首を縦に振ってうなずいた。

名前を呼ぶと、その後はビールと料理をつまみながらお互いのことを話あった。

「お母さん、いないんですか?」

副社長が父子家庭だと言ったため、私は聞き返した。

「母は俺が5歳の頃に病気で亡くなったんです。

それ以降は父と2人で暮らしています」

そう答えながら、ぬるくなってしまったビールを飲んだ副社長に私は複雑な気持ちを感じた。

「気にしないでください、なれてますから」

笑いながら言った副社長に、
「はい…」

私もぬるくなってしまったビールを口に含んだ。