東京恋愛専科~または恋は言ってみりゃボディブロー~

「は、はい?」

何を言われたのか全くわからなかった。

副社長、何気なくとんでもない発言をしたんじゃないですか?

「だから、つづりさんも名前で呼んでください」

早速と言うように、副社長が私の名前を呼んだ。

えっ、えーっ!?

たった今会ったばかりなのに、何よりただのしがない派遣社員に名前で呼べって、ムチャクチャにも程がありますよ!

「つづりさん」

副社長がもう1度、私の名前を呼んだ。

発言を撤回すると言う気持ちは毛頭もないみたいだ。

それに、何より…副社長のことをもっと知りたいと思っている。

初めて会った男に名前を呼ばれて嫌悪を感じるどころか、満更でも思っていない自分に気づいた。

私は気を落ち着かせるために、深呼吸をした。

すぐに唇を開くと、
「――光明さん」

副社長のことを名前で呼んだ。