副社長は私の手を引くと、梅里専務の前に歩み寄った。

「実は…」

副社長がそう言って話を切り出そうとした時、
「副社長、お待ちください」

勢いよくドアが開かれたと思ったら、小会議室に誰かが入ってきた。

「えっ…」

「社長…?」

入ってきた人物の顔に、私と梅里専務は同時に呟いた。

社長は私たちと梅里専務の間に割って入ると、
「梅里専務、まずは噂の否定からさせてください」
と、言った。

「ひ、否定…?」

梅里専務は訳がわからないと言うように聞き返した。

社長が副社長に視線を向けた。

そのことについて説明をしろと言うことらしい。

副社長はそれに対して、わかったと言うように首を縦に振ってうなずいた。