コンコン

副社長が小会議室のドアをたたくと、
「どうぞ」

中から返事が返ってきた。

その返事に、自分の躰がビクッと震えたのがわかった。

「つづりさん」

ギュッと強く握ってくれたその手に、私は首を縦に振ってうなずいた。

「失礼します」

副社長はそう声をかけると、ドアを開けた。

「副社長…」

白髪混じりの黒髪に、高そうなスーツを着た中年男が私たちを迎えてくれた。

この人が、例の梅里専務のようだ。

「おはようございます」

副社長があいさつをしたら、
「おはようございます」

梅里専務は返した。

「それで、そちらの方は…?」

梅里専務が私の存在に気づいて、
「えっ、何で手を繋いで…?」

同時に、私と副社長が手を繋いでいることに気づいたみたいだ。