東京恋愛専科~または恋は言ってみりゃボディブロー~

特に父が美味しいと評しているのが、この『ハクチョウ屋』の食パンである。

『ハクチョウ屋』は食パン専門店のパン屋で、店内にはさまざまな種類の食パンが並んでいる。

パンに使う小麦粉から焼き加減までこだわっていると言うのが、美味しさの秘けつと言うものらしい。

美味しければ別にいいじゃんと思っているこちらからして見たら何のこっちゃと言う話だけど。

…まあ、いいか。

「今度は自分の買い物を済ませよう…」

この間修理に出した万年筆を取りに行こうと思って歩き出したら、目の前にしゃがみこんでいる女性がいることに気づいた。

「あの、どうしましたか?」

俺が歩み寄って声をかけると、彼女は顔をあげた。

「えっと、ヒールで転んで足をくじいてしまいまいて…」

呟くようにそう言った彼女の足元に視線を向けると、折れてしまったハイヒールが転がっていた。

「大丈夫ですか?」

俺は彼女の目線にあわせてしゃがみこむと、声をかけた。