だって、信じられないものは信じられないんだから仕方がないじゃない。

直接言われたんだったらまだしも、つきあってくださいの“つ”の字だって言われていない。

「しかし、つづりも災難だったわね。

産業スパイ疑惑をかけられるなんて、まるで映画かドラマの世界じゃない」

その話題を出したナオに、
「でも結果的には解決できたからよかったよ」

わたしは言った。

「それで、未だに会って話ができていない状況なんでしょう?

どうなっちゃうのかしらね、その村坂さんって人」

「私もわかんない…。

村坂さん、ものすごいと言っていいくらいに落ち込んでたし」

「間違えてつづりにプロポーズをしてきた彼が悪いと言えば悪いんだけど、こうなってくるともう同情するしか他はないわね。

1日でも早く彼女と連絡がとれることを祈るしかないわね」

ナオはそう言うと、マンゴージュースをストローですすった。