東京恋愛専科~または恋は言ってみりゃボディブロー~

「どうぞ、お入りください」

木田さんに促され、
「失礼します」

私は社長室の中へと足を踏み入れた。

「やあ、どうも」

やけにフランクな人だな…。

そう思いながら社長の顔を見たら、
「ああっ!」

驚きで大きな声が出て、思わず社長を指差してしまった。

「コラ、社長に何てことを」

「あっ、すみません…」

木田さんに叱られて、指差していた手を下ろした。

だけど…こんなことってあるものなのか?

恐る恐る社長の顔をもう1度見たら、
「昨日はマナカをありがとうね、無事に帰れたよ」

そう言って、昨日の老人――もとい社長は私のマナカを渡してきた。

「あ、はい…」

まさか、駅で会ってマナカを貸した老人がここの社長だったなんて…。

あまりにも信じられない出来事に驚きながら、私は社長の手からマナカを受け取った。