「ポンちゃんしか男を知らないって言い方だな」
「だからなに?車に乗せてもらうのはポンちゃんだけだもん」
「だから安全運転だと思うのか?」
「ポンちゃんと比べたらね」

あたしが即答すると笑うことを止めたミノルは今度は「んー」と考え出した。
何が言いたいのかさっぱりわからないけど、わからないのは知り合ったときからだから、わかろうとも思わない。

信号早く変わらないかな?と思っていたとき、前を向いたままのミノルに「なぁ、」と声を掛けられた。

「俺が安全運転なのはお前を乗せてるからだっていう風には考えないのか?」
「なんで?他にも女の子はいるでしょう?」
「いないって言ったら?」

前を向いたままで話しているから表情がわからなくて本当のことなのか嘘なのかわからない。

最後の言葉はあたしを試すような言い方で少しムッとした。
それはあたしに聞くことじゃないでしょう、っていうのが本音。
試すような言い方にムカついたから言ってやった。

「そんな“特別扱いしてる”みたいな試すような言い方したって同じだよ。あたしはあんたを好きになることなんてないんだから」

ふん、と鼻を鳴らして言ってやると不機嫌な顔のミノルが振り向いた。
怖っ!と思うのと同時に信号が変わって、くんっと後ろに引っ張られる。
思わず「きゃっ!」と小さく叫ぶも無視されて速度は上がってく。

一体どうしたの?!と思ってると信号を越えた一つ目の曲がり角を右に曲がらなきゃいけない所を左に曲がってすぐに止まった。
それも急停車で。

「ちょっと、危ないじゃない!!」
「引っ張られても大丈夫って言っただろ」
「今のはわざとでしょう?!」

急いでるならまだしも、いきなり運転を荒くするなんて信じられない!と顔全体で表現していると、エンジンを止めてあたしの方へ向いた。

あまりに無表情だから何?!と構えていると「さっきの言葉だけど」と小さく話し出した。

「他にも女がいるってどういう意味?」

そんなこと?と怪訝に思っていると睨まれて仕方なく素直に答える。

「あたし以外にも後ろに乗せる女の子はいるでしょうってこと」
「つまり、彼女がいるのにお前を乗せてるとでも?」
「そう言ってるの」

あたしが素直に尋ねると「バカかお前は」と返ってきてムカついた。

「バカってなに?ポンちゃんだって彼女いるじゃん。それでもあたしを乗せてくれてたもん!」
「それはお前が幼なじみだからだろ?」
「だからなんなの?」
「俺がお前を初めてコレに乗せたとき、出会って2日目だぞ?それもろくに会話もせずの2日目だ」

そう、あの時は散々だった。
挨拶して言葉を交わすことなくキスされて、二日目にコレに乗せて大学に着いたときも礼だとか言ってキスされた。
出会った初日、二日目と安易にキスされて相当悔しかったあたしの気持ちをミノルは知らない。

思い出した悔しさに「だからなんなのよ!」と人通りが少ないことを確認して叫ぶように言うと「だから」と正反対のトーンで答えが返ってきた。

「お前だからっていう考えには至らないわけ?」