言い終わって急に冷静になったのか、顔を隠してブツブツ文句を言う。
きっとすごく恥ずかしいんだろう。
出会ってすぐはお互い素直に気持ちを言葉にしていたけど、ここ2年は言わなくてもお互いに気持ちが通じ合っているみたいに行動してたからそれが原因で拗れちゃったというか、あたしがあらぬ方向へ走った。
安心、安定が1番だけどそれだけじゃダメ。
やっぱりどんな時も言葉は必要。
「實がそんな風に思ってるなんて知らなかった」
放り出された手を自分に巻き付けるように掴んで
手を握る。
「言うつもりなかったし」
「なんで?」
「わかってると思ってたから」
「わかんないよ」
「ですよね」
「・・・」
顔を隠していた實が長い息を吐き、向かい合わせに体勢を変えるとぎゅっと抱きしめてくれる。
少し苦しいくらいが5秒ほど続いて、離れた實と目が合う。
また無表情。
「出会った時はよく笑ってたのに」
「は?」
「今、笑うときの方が少ないね」
「...違う顔も見てみる?」
そう言って、あたしに覆いかぶさるとにやりと笑った。
そういう笑顔はいらないんだよ...と思いながら、その笑顔にドキドキする。
数秒見つめあって、また少し笑って、そして實の手があたしの頬に触れる。
なんだかきゅんとなるし、気持ちいいし、いつもと違う雰囲気で緊張するし、なんだか違うあたし達みたい。
自然に目があって微笑みかけると、なぜか實の動きが止まった。
どうした?と寝転んだまま首を傾げてみせて、實の頬に触れようとしたら、なぜか拒否されて、数秒止まってから不自然に目を逸らして離れようとしたところを首元を掴んで止めた。
「…やめろ」
「離れようとするから」
「離れるんだよ」
「なんで?」
「なんで?」
「うん」
離れないように實の服を両手で掴んで離さない。
實はあたしに覆いかぶさったまま下から問いかけるあたしと目を合わせては逸らして、また目が合えば溜息を吐きながら目を逸らす。
一体何があったのか。
またわからない。
「ねぇ、實」
首元を掴んでいる手を少しだけ引っ張ってみるけど、服が伸びちゃうだけでぴくりとも動いてくれない。
やっと2人きりになって、自分の気持ちも伝えて、實の気持ちも聞けたのに離れるなんて寂しすぎる。
實が動かないことをいいことに上半身を起こして實に抱きついた。
「お前、マジでやめろ…」
「ヤダ。離れていくなら離さない」
ぎゅーっと抱きついて頬も實と合わしちゃう。
實の香水で少しくらくらする。
ナマケモノみたいにぶら下がったままのあたしを支えるのはきっと疲れるはず。
あと1分経っても反応が無ければ離れようと思っていたら、あたしをぶら下げたままの實が正座をしてその上にあたしを座らせた。
「唯」
名前を呼ばれて、キュンとなって、手は離さずに向かい合う。
同じ高さにある實の顔は少し困ったようで、なんだか少し可愛い。
「唯」
「はい」
「今すぐ離れたら何もしなくてすむ。でもこれ以上は俺がもたない」
「うん」
「うんってなに」
困ったような呆れたような、でも熱い視線があたしの心臓を早くする。
噛みつかれそうで、捕まったら逃げられそうもないような瞳。
見たことのない實が目の前にいる。
「實」
「…なに」
もう目は逸らしてくれない。
また心臓がドクドクと大きく脈打つ。
この先にある不安と期待とあたし達にしか見えない、感じられない情熱が。
「實、今日はもう離れたくな、」
言い終わる前、あたしから少しずつ近づいていたとき、目が鋭くなって噛み付かれるんじゃないかと恐怖でドクンとした。
深く、長い、キス。
今までしてきた可愛い触れるだけのキスじゃない。
ずっとこの時を待っていたかのように途切れることなく続く。
苦しくなって少し目を開けると変わらずあたしを射抜くように見る瞳。
呼吸を整えていると少し優しくなり、でもまた長く長いキスした。
「…今更やめるとか言うなよ」
「言わない」
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