「・・・」
「唯」
「・・・」
「どうせ泣くほどデカい事じゃないんだろ。はよ話せ」
「なんでそう思うの」
「今までの中でお前が泣いたのって悠穂のことだけじゃん。あと泣いてるの見たことねぇもん。悠穂のこと以上に大変なことなんてなさげだし、あとはしょうもないことだろ」
「...しょうもないことって言わないでよ」
あたしが勝手に思い悩んでいることでも、實に伝えていない勝手な感情であっても、自分なりに関係をよくしようと思って考えていたことだし、それは決してしょうもないことじゃないし、結果としてこじらせていても泣けちゃうくらい2人のことを考えてる。
これからもずっと一緒にいたいって思うから我が儘言わないように、重くならないように、泣き虫にならないように、もっと自立しなきゃって頑張ってるつもり。
「あたしは實がしんどくならないようにってずっと思って、ポンちゃんに甘やかされてきたから何が我が儘になっちゃうのかも考えたし、ベタベタしたら鬱陶しいだろうとも思ったし、小さなことで泣かないように自分で考えたりしたし。
でもそうしてたらね、ポンちゃんがどれだけ大変だったかってよくわかった。
だから實には同じようにならないように、嫌われないようにって思ってたのに、それをしょうもないことなんてひどいよ」
「あー、色々わかったわ」
人が必死で話してるのに「なるほどな」とか「そういうことか」とか、最終的には溜息吐いて頭を撫でてくれる。
さっきの疲れた溜息じゃなくて、安堵ともとれるような体から全部気を抜いちゃうような、体から力が抜けていくのが、ひっついていてわかった。
「怒った?」
「唯に怒ったことないだろ」
「呆れた?」
「呆れた...は違うな」
「嫌いになる?」
「こんなことで嫌いになってたら今頃、大嫌いだろ」
大嫌いまで言わなくていい...とヘコみながら、實が頬を引っ張ったり、頭を撫でたり、いっぱい触ってくるから、どうでもよくなっちゃう。
胸がきゅうぅぅっとなる。
これはヤバいやつで、この感覚がくると實に触れたくてたまらなくなる。
傍にいたくて、触れあっていたくて、もっと...ってなっちゃう。
引かれるかもしれない、変態かよって思われるかもしれない。
でも触れたい衝動をもう止めたくない。
ずりずりと實の枕元へあがって、胸の上に頭を置いて、ドクドクと心臓の音がダイレクトに伝わる。
少しも変化しない鼓動。
ちょっとくらいドキドキして動揺してくれてもいいのに全然そんな素振りもない。
恋人に変わっても安定していられるのは素敵なことだけど、友達とは違った感覚でいるのはあたしだけらしい。
あたしだけが實を求めてて、なんだか恥ずかしくもなる。
「唯」
「はい...」
「俺はありのままの唯でいいんだけど」
「へ?」
視線をあげても位置的に目が合わない。
体を起こそうとしたら實が前髪に触れたから動けなくなった。
「誰と俺を比べてんのかわかんねぇけど、俺が知ってんのは悠穂にベタベタして追いかけ回す鬱陶しい女で、心許した奴には隙だらけのおバカな女なんだけど」
「...いいとこなくない?」
「いいとこ知らない。でもいいとこ無いお前の傍にいるんだよ、俺は。悠穂にベタベタしようが、アホ丸出しだろうが、隙まみれだろうが、そんなお前がいいんだよ。甘えるのを我慢したり、気を遣って強くなったりしなくても、いいとこないお前を知ってるんだから今更なんだよ。...癪だけど、悠穂の代わりなんてクソくらえだけど、でもあの時のお前がスライドするように俺に向けてくれたらって、ずっと思ってるんだよ。
・・・なんでこんなこと言わなきゃなんねぇんだよ」



