COUNT UP【完】


そのまま手を繋いでラウンジを出る。
コンビニはホテル内になく、駅のコンコースまで行かなくちゃいけない。

2人で手を繋いで歩くことは今までもあったけど、恋人という形では初めて。
気持ちが繋がるというのは、片想いの感覚が温かくなる。
そして、なによりも嬉しいと感じてる。

「唯」
「なに?」
「見すぎ」
「え?」
「見すぎ。前見て歩け」

無意識とは恐ろしい。
恋とは恐ろしい。

最初は全力で拒否してたのに好きになると無意識の中でも視界に入れたがる。
いや、視界に入りたがるのか?

どっちでもいいけど、實には甘えない、束縛しないって決めたのに無意識にこれじゃ先が思いやられる。
いっそのこと決意表明して協力してもらった方がいいんじゃないかと思えるくらい。

コンビニに着くとバラバラに店内を周り、あたしは迷うことなくドリンクコーナーに、實はお手洗いに向かった。
お水を取って、スポーツドリンクを取って、今すぐ飲むコーヒーを取って、お酒コーナーの前に立つ。
腕を組んで悩んでると「飲むの?」と迷わず扉を開けてハイボールを取り出した。

「あ、やっぱり」
「やっぱり?」
「實が最初に何を取るか1人ヤマかけしてたの」

次はコレだよね、とハイボールの梅味を取ると「2本取って」と言われてカゴに入れた。
それから店内をくるくる回って、お菓子を入れたら「太るぞ」といじられ、気が付けばお菓子の量が減っていて怒ると今日食べる分だけにしろとお母さんみたいなことを言われる。
なんだかんだ結局お菓子2つとお酒が4本、ソフトドリンクが2本で飲み物ばかりになった。

重い方の袋を實が、軽い方を自分で持って、手を繋いで帰る。
片手が空いていて、手のひらが見えていたからこれは繋げと言ってるんではなかろうか!と手のひらに手の甲を合わせて指だけ絡めた。
小指と薬指だけに絡めると離れないようにきゅっと握り返してくれる。
表情は変わらないのにツンデレかよ!って変なテンションになっちゃう。

ズレないポジションで緩く絡めた指。
ぴったりくっつくように繋ぐでもなく、恋人繋ぎでなく、少し距離が開けば握る強さで離れないようにするだけ。

会話もなく、隣に並んで顔を見ながら歩くわけでもなく、實の後ろ姿を見ながら歩く。
恋人だけど変な距離感。
恋人なのにこの距離感。
不思議だけど後ろ姿が落ち着くのはなんだろう。