COUNT UP【完】


「さっきフロントに行ったら部屋もう一泊予約されてるって言ってたんだけど」

「…言ってなかったっけ?」
「聞いてないよ」

普通に考えると、荷物は置きっぱなしだし、レストランの予約があったとしても何も言われないのは不自然すぎる。

「おかしいと思ってはいたけど」
「サプライズだから」
「そうだけど」
「あたしからのお祝いじゃない?しかも明日お休み取ったでしょう?せっかくダブルでお祝いするんだからゆっくり過ごしたいじゃない?」
「・・・」
「ダメだった?」

ダメとか言われてもどうしようもないけど、と思いながら横顔に聞いてみる。
實は視線だけ向けて返事もせずにお酒を飲んでる。

なかなかサプライズも難しい。
世の素敵女子たちに色々と教えていただきたい。

その後はいつものあたし達で今日のポンちゃんの結婚式の話だったり、写メをもらったり、この時はこうだったとか、あたしが泣きすぎてスタッフさんがドン引きしてたとか、そんなあたしを自分たちの式なのにすごく心配して見ていたらしいポンちゃんといずみんの様子。

つられて泣きまくるゆっくんが最高にウザかったとか、甲斐甲斐しく左右の面倒を見る宏ちゃんがお祝いに浸れず哀れに思えたとか。

「あたし今日1日やばいね…」
「今日に限らないけどな」
「だよね…」
「普通にへこむなよ。通常運行だろ」
「今日はダメじゃん、それ」

まぁいいじゃん、と頭をポンポンと撫でてくれる。
なんだよ、きゅんとしちゃうだろう...と甘く震える。

「實こそ今日は起伏が激しかったね。あたしも今日は疲れたよ」
「また言うか」
「珍しかったから一生忘れられないよ」
「忘れろ。まぁ、もう無いよ」
「本当?」
「今日、片付いたから」
「今日なの?え、ポンちゃんのせいなの?」
「お前のせいだよ」
「えぇ〜〜意味わかんないよ」
「わからなくていい」
「気になるよ。今後のために」
「もう無いって言っただろ」

こういう話は絶対口を割らないから教えてくれないんだろう。
實の中で自己解決しちゃって、あたしにはわからない。
わからないから影響がないのか、本当に解決していて影響がないのか、どっちにしろあたしにはわからない。
それで實が疲れないならそれでもいいけれど。

「もう飲まない?」

空いたグラスを指して聞いてみる。

「唯」
「ん?」
「眠いんだろ」
「...バレた?」

久しぶりに飲むワインと結婚式で消耗した体力でちょっと眠くなってきた。
それとここの薄暗さと心地よいBGMがさらに眠気を誘う。

「酒がまわってるわけじゃないよな」
「うん、眠くなってきただけ」
「部屋戻るか」
「うん」
「ちょっと歩ける?靴擦れは?」
「靴擦れは大丈夫。どこいくの?」
「コンビニ」
「お水ほしい」
「行くぞ」

席を立ち、ジャケットの着崩れを直して、あたしの手を掴み軽く引っ張ってくれる。
少し深めのいいソファだったから自分でもかなり踏ん張ったけど。