COUNT UP【完】


「勢い?嫉妬したんじゃなくて?」

んぐぐっと言葉に詰まって、ボボボッと急激に上昇する顔の温度。
薄暗くテーブルのスポットライトの照らされる實の顔は、普段あんなに笑わないのにこんな時にめいっぱいの優しい顔をする。
すごくズルい。

「その顔はダメだよ」
「お前もな」

ピアスを持ったあたしの手を自分の耳元へ寄せ、付けろと促す。

どの仕草も、言葉も、視線も、なにもかもにドキドキする。
触れる手だって、そこから熱が伝わりそうで。

ふぅぅぅと長く息を吐いて呼吸を整えると實の手から離れて、ピアスのキャッチを外し、實との距離を少し縮める。
膝が少し触れて、またそこから心臓へ脈打つ。

いつもどうして話してたっけ?
冷静になるために全身の神経の感覚を一時停止にする。
なるべく普通にしていないと会話ができない。

「…じゃあ、ホール確認するよ?」

まずはあたしのピアスが付いている方の耳たぶに触れる。
反対側で見えないから實の顔の前を通り過ぎ、手を伸ばすと少しだけこちらを向いてくれた。
目が合えば、抑えてるドキドキが再発しそうだから、視線が重ならないように頑張る。

「もうちょっとこっち向いて」

少し体を傾けてもらって、少しだけかがんでくれる。
目線の高さが同じになって、目は合わせていないのに視線だけ感じる。

緊張するからやめてほしい。
顔が近くて、息をするのも緊張する。

あたしのピアスを外して、買ったピアスを付ける。
付けたあと、昨日の夜のような感覚になって、また嬉しくなった。
続けて右耳に触れる。
耳たぶに触れて、少しの疑問。

「ねぇ、これホール通る?」
「たぶん」
「いつからピアスしてないの?」
「1年くらい?」
「通るかな?痛かったら言ってね」

隠れているホールを少し広げて探し当てると、もう片方の耳にピアスを通した。

「大丈夫?」
「あぁ」

後ろが少し通りにくかったけど、特に何もなく付けることができた。
両耳にあたしのモノだというシルシがある。

「ねぇ、これでよくない?」
「ダメ」
「ダメって…」
「はい、最後」

テーブルに置いていたゴールドのピアスをあたしに差し出し、付けろと無言の圧力。
やっぱり返してくれないのか...と諦めて、2個めのホールに通す。
パチンと音が鳴り、完全に實のモノになってしまった。

「…完成」

両耳を見て、改めて鎖を付けたような気分になる。
それはちょっと心地よくて幸せなもの。
意外と独占欲強いんだな~って今までに感じたことのなかった感覚に恥ずかしいや罪悪感ではなく、優越感で満たされる。

両頬に触れて、自分のもの!と嬉しくて、口元が緩む。

「唯」
「ん?」
「触りすぎ」

両手を離され、ゆっくりと視線を上げると眉間に皺を寄せた實と目が合った。

「ここをどこだと思ってんだ」
「え、あ、え?!あ、あぁ…」

ゆっくりと實から一歩さがって離された両手でそのまま自分の顔を覆う。

「・・・」
「俺の方が恥ずかしいんだけど」
「・・・わかってる」