COUNT UP【完】


「明後日が本当のお誕生日だけど少し早めのお誕生日おめでとう!当日渡せないからプレゼントも持ってきちゃった」

紙袋を渡すと「ありがとう」と受け取ってくれて、中を覗いてから近くにいたウェイターさんを呼んで、帰りに受け取れるように預かっていてほしいと頼んだ。

「今、見ないの?」
「あとでゆっくり見る」
「そう。じゃあ食べようっと」

アイスが溶けちゃうことを心配してたデザートにようやくありつく。

「美味しい、どうしよう、太っちゃう」
「色気より食い気な」
「...だね」

否定する言葉も出なくて、ちょっとへこむ。
色気なんて大人になったら勝手に出てくるもんだと思い込んでいたけど、じわじわと湧いて出てくることもなく、ちんちくりんなまま今に至る。

「いずみんのような色気が欲しい...」
「その体型じゃ無理だろ」
「わかってる〜」

正論に怒ることも拗ねることも出来ない。
普段、お酒を飲んでも意地悪なこと言ったりしないのに今日は毒舌満載。
思春期男子になるし毒舌キャラだし、なんだろう。
全然優しくない。
今日1日違和感しかなくて、じーっと見つめてみるけど、無表情からは読み取れない。

優しくない實だけど、以前のあたしならちょっとでも態度が変わったりするだけで不安になっていた。
なのに、實だと感じないのはなぜだろう。

目の前でひたすらワインを飲み続けてる實。
顔色が変わることもなく、お酒の強さと無言の圧力は感じるけど、不安だと思うことはない。

「なに?」

冷たく返事をされて漫画のようにキュンとはしないけど、ちゃんと見てくれてるんだなって思う。
人にあまり興味を示さない人だからそう思っちゃう。

「實」
「ん?」
「...なんでもない」

好きだよ、と言おうと思ったけど、やめた。
流れ的に間違ってる気がする。

お酒のせいか気持ちの抑制があまり効かない。
ピンとしていた背中も少し疲れてきた。

お手洗いに行こうと席を立ち、實に伝えてテーブルから離れる。
まだ足にはきていないけどフワフワして気持ちがいい。
久々のお酒だからまわってるのかもしれない。

「あれ?」

フロアに出てきたら實が近くのソファに座っていた。
手には紙袋を持っていて、気付かれないように近付いたのに簡単に気付かれて顔が呆れてる。

「レストラン出ちゃったんだね」
「もう食うもんないって言ってたし」
「そうだけど」
「まだ飲めるだろ」

あたしの歩く姿を見て、大丈夫だと判断したのか手をひいて歩き出す。

「ラウンジ?」
「そう」

嬉しそうな顔して、といっても微笑む程度だけど、テンション高めの實が珍しくて、ちょっと嬉しい。
エレベーターに乗ると手が離れたから腕を組んでやった。
ぴったりくっついてみるけど、實は無反応。

何も変わらないとか言いながら変えてみても反応しない。
そんなところも實っぽいから全然問題ないんだけど、逆にベタベタし始めたあたしに引いてるのかもしれない。