COUNT UP【完】


「美味しい~~!!」

いずみんがどうしてもこのホテルで挙げたいと言った理由の中に入ってた“料理が美味しい”というのは本当で、フレンチなんて普段から食べ慣れないあたしでもクセなく食べられるお料理がたくさん出てくる。

「美味しい…」

披露宴で食べれなかった分を存分に味わう。
本当に美味しい。
フレンチなんて今まで数回しか行ったことなくて、所作も基本的なものしかわからないけど、なにより美味しすぎて幸せすぎる。

「ほんと美味そうに食うな」
「美味しい!最高!」

實は慣れてるのかスマートにフォークとナイフを使いこなす。

それにしても何をさせても器用にこなすところは羨ましい。
おまけにスーツがそれを映えさせる。
あたしはただただ黙々と食べ続けるだけ。
外見なんて気にしだしたらキリないのはわかってるけど、なんだか悔しい。

「なんでまたここで飯する気になったんだ?」
「飯って言わないで!たまにはいいじゃない、お洒落なところも」

そう言ってみたけど、實はなんだかまだ気になるようで首を傾げる。

確かに流れでいえば逆の立場でも同じように思う。
たいした会話もしないし、常に話し続けてるわけでもない。
つまらない食事だと思ってるかもしれないけど、それはそれ。
少し緊張する心臓を抑えながら、實の顔を盗み見てた。

「次はデザートでございます」

お腹が空いていたのもあって、すごく食べるのが早かったらしく気付けばもうデザート。
ゆっくりと味わって食べるつもりだったのにやっぱり無理だった。

「あたしはフレンチ向きじゃないんだな~」
「今、気付いたのかよ」

實は赤ワインを飲みながらふっと鼻で笑う。

「わかってるから見た目だけでも頑張ったもん」
「そうだな」

少しバカにしたようにだけど笑うから、あたしもなんだか笑ってしまう。
お酒のせいで感覚がおかしくなってるんだと思う。
ふわふわして色々と緩くなって楽しい。

「お待たせいたしました」

デザートとドリンクを持ってきてくれた男性の後ろからもう一人出てきて、小さな紙袋をくれた。
それはあたしだけが受け取って、お礼を言うと可愛い笑顔で返してくれた。

「お誕生日おめでとう」

男性がテーブルから離れたあと、プレートの文字を凝視するから伝えると、あたしを見てまた止まった。
なんのことか全くわからなかったみたいで、通常の反応をするのに珍しく時間がかかってた。

「少し早いんだけど、当日は出張でお祝い出来ないじゃない?だから、今日お祝いさせてほしかったの」

ロウソクは立てなくていいと断って、プレートメッセージだけにしてもらったけど、可愛く書いてくれていてよかった。

本当は出張から帰ってきたあとにしようか悩んだけど、誰よりも早くお祝いをしてあげたいと思うと早めにする方がいい!と自分の中で思っちゃって、この日を選んだ。
思いついたのは2、3日前だったから今日も部屋を取れるかどうかが心配だった。
結局、ポンちゃんと實が仕組んだ前日のお泊りはあたしの計画にも都合よくて、全てがいい感じになった。

今日のことは想定外だったようで、驚いてくれて満足してる。