COUNT UP【完】


・・・今まで見せなかったあたしの素直な気持ち。
今、ものすごく溢れ出ていそうで困った。
この心地良い雰囲気を壊したくなくて、ずっと我慢していたけど、もう今日が限界なのかもしれない。

好きだと気付いた時からずっと気持ちを全部出すのを我慢してた。
それが原因で今までのお別れがあったし、そもそも實が知ってるあたしはそういうあたしじゃない。
ベタベタするような、いつも全力で想いをぶつけるような何の壁もないあたしを知らない。

ポンちゃんみたいに全力で想いをぶつけていたら實も離れていってしまうんじゃないかって思えて、昨日まで好きだという言葉すら言えずにいた。
ポンちゃんは「實はそんなこと言わないし、ちゃんと唯を受け入れてくれるよ」って言ってくれたけど、そんなのわからない。

ポンちゃんは鍛えられているんだよって言うと「俺は感謝してるよ」と意味不明な返しがきたから、きっとポンちゃんは変わってるんだと思う。

あたしが話さないから心配したらしく立ち上がって、あたしの顔を覗き込む。

「唯、どうした?」

“あ、近いな…”
そう思ってたら、もう勝手に動いてた。

「・・・」

固まられたのは初めてだから、どうやら引かれたのかもしれない。
やっちゃったなーと思いながら、そのまま一歩下がってバスタオルを取って、くるりと回ってシャワーを浴びに向かった。
全然動かなかったから、相当びっくりしてるんだと思う。

まぁ、いっか!と思いながら、服を脱ごうとするとノックも無しにドアが開いて、腕を引っ張られた。

「え、え、ちょっと、なにごと?」
「こっちが聞きたいわ」

そのままソファに座らされて、なぜかベッドに座る實と向かいあう。

「なにあれ」
「あれ?」
「なに今の」
「今の?あ、キス?」

はぁぁぁぁ~と長い息を吐いて頭を抱えてる。
ダメだった?と聞くと「ダメなわけあるか」と怒られた。

「嫌だった?」
「はぁ?」
「だって、なんか怒ってるし、目も合わないし。さっきは合ったけど、またなんか素っ気ないし。タイミング悪かったし、反省する…から、とりあえずシャワー浴びてくる」

名前を呼ばれたけど、止まらずに今度はドアの鍵をかけて離れた。

なんだろな、なんだかギクシャクする。
昨日の雰囲気はどこにったのやら。
ちゃっかり持っていた携帯でポンちゃんにメールを送る。

【實がおかしいんだけど】

それだけ送るとすぐにレスがあったけど、【實も頑張ってるんだよ】と書いてて意味不明だった。
何か知ってるか聞いてみたけど、【知ってるけど知らないフリしてる】と、また意味不明な返事だった。

結婚式前でおかしくなったんだろうか。
頼りにならないから【結婚式楽しみにしてるね】と返して、シャワールームに入った。