俯き感傷に浸っていることに気が付いたのか、溜息吐いて立ち上がり真横に座った。

ぴったり二人掛けのソファー。
背もたれに体重を預けて座る實と同じように座る。
天井を見てる實がぐいーっと伸びをして見えた左手に付いている時計。
自分の左手もあげて時計を見比べた。

實が誕生日にプレゼントしてくれた時計。
お揃いの白の時計。
メンズだからあたしが付けるには少しゴツかったけど、それが可愛いと言った。

「なぁ」

あたしの左手首に付いている時計も一緒に包み込むような形で手を掴み、少し引き寄せてコツンと頭がぶつかった。

「ずっと傍にいてやるから結婚しろ」
「え?」
「え?じゃねーよ」
「え?それプロポーズ?」
「それ以外の何があんだよ」
「告白を飛ばして、プロポーズ?」
「告白はお前がするんだよ」

えー?!と胸を押して離れて距離を取ろうとすると背中に回った腕。
軽く抱きしめられ、近付く顔に自然に目を閉じようとしかけると動きが止まる。

「唯」
「なに?」
「ここでお前から告白して俺にキスしろ」
「えー」
「お前からしてもらったことないし」

確かにしたことないけど、告白とか急すぎる。
ていうか、命令でプロポーズってどうなの。
今まで強引だったから命令形なところには驚かないけど。

「なんだ、その顔は」

じっと見てたせいか怪訝そうな顔をされる。

「いや、別に。なんていうか...強行突破するのかと思ったから」
「強行突破?」
「うん」
「はぁ?んなことお前からの告白聞く前にするわけないだろ」

にやりと笑って、視線で“早く言え”と促される。
あたしが實のことを好きだという確信がどこにあるんだろう。
この自信満々な振る舞いがいつもながら腹立つ。
好きじゃないけど、とか言ったら泣いちゃうんだろうか。

「お前ねー、なにいらんこと考えてんの」
「んー、色々」
「つか、なに余裕かましてんの?」
「別に余裕かましてるつもりはないけど、あたしが思う實の位置は目の前…と真横だよ」
「真横?」
「うん、真横。真横…より2歩前くらいでいてほしいかな」

實は少し考えて「伝わりずらいわ!」と言ってからキスをした。
お前からしろって言ったくせに自分からするっていういつも通りの流れ。
そして動揺すら見せないあたしの頭を叩いた。

「…痛いんだけど」
「お前、強くなりすぎなんだよ」
「誰のせいでしょうね」
「俺のせいかよ」
「だってポンちゃんがいないのに他に誰がいるの?」
「悠穂がいた時の方がいくらか可愛かったぞ、お前」
「じゃあ、可愛い子探せばいいじゃない」
「いいのか?」
「・・・嫌だけど」

目の前でさっきと同じようにしゃがみあたしを見上げる。
可愛い子を探せばいいじゃないなんて言ったけど、それは可愛くない発言に対しての売り言葉に買い言葉で、今から實に離れられたら本気で立ち上がれなくなりそう。
それくらいあたしの一部になった。

多分、ポンちゃんよりも深く。