「つか、俺もちゃんとしたいわけ」
「なにを?」
「なにをじゃねーよ」
 
いつもの呆れたような台詞。
ベッドに腰掛けた實とソファーに座るあたしは向かい合う。
真面目な話をするなんてほぼ無いから真っ直ぐな目で見られると変に緊張する。

「お前と俺が知り合って…というか、こういう感じになって2年以上経つだろ」
「そうなの?」
「そうなんだよ。で、俺らはまだ何も進んでない」
「どこに?」
「どこにとかボケてんじゃねーよ。飯も遊びも泊まりも序盤にキスもしてんのにまだ友達ってどーよ」
「泊まりは仕方ないじゃん」
「お前が酔いつぶれるから、しゃーなし泊めただけ。でもそこじゃない。もういい加減嫌いじゃなくなっただろ」
「うん」
「そろそろいいんじゃね?」
「いいと思…う?」
「なんで聞くんだよ」

だって、そんなの今更だと思ってしまった。
正直な気持ち、實への気持ちが實の想うそれと同じだから。
ただ、2年の間そういう素振りを見せなかったから恥ずかしいというか、別にこのままでもいいみたいな気持ちがある。

どっちにしろ、この関係が心地いい。
ていうか、もう2年も経つんだーっていうくらい早かった。
そのくらい一緒にいて、いっぱい思い出作ってもらった。
周りから“どうなの?”と聞かれて誤魔化しても否定はしなくなった。
そういう意味では今更な感じがする。

「あいつらにあてられたわけじゃないけど、この期にちゃんとしよう」
「その為の同室?」
「そう」
「大袈裟じゃない?」
「俺にとったら大袈裟どころか一大事だっつーの」

そうなの?とか言えばまた怒られそうだからやめた。
一大事なことだなんてらしくない。
確かにいつもより落ち着きはないけど、いつもと変わらない。

首を傾げて待っているとベッドから腰をあげて近付いて来る。
なにかと思ったら、目の前でしゃがんで「お前、俺の事どう思ってんの」と聞かれた。

「嫌いじゃない」
「だろうな。悠穂離れはしたか」
「うん。だって實がいてくれたし」
「そうか。今日悠穂と会ってすぐハグしてたけどな。で、好きか嫌いかって言えば?」
「好き」

なんなんだろう、このくだりは。
いつもみたいに結論バーン!て言えばいいのに何かを確かめながら進めてる。

「好きか…悠穂と同じくらい?」
「ポンちゃんと實は違うよ」
「前も言ってたな。俺はお前のどこにいるんだ?」
「どこって…難しい質問だよ」
「難しくないだろ」

遠回しな質問になんだかモヤモヤしてくる。
言いたい事があれば言ってくれたらいいのに。
それともポンちゃんみたいに離れてしまうんだろうか。
不安になって目の前でしゃがむ實の袖を掴んで「遠くに行くの?」と聞いてみた。

「どうしてそういう質問になるんだ」
「だって回りくどいし質問が難しいもん。いつもみたいにストレートに言ってくれたらいいのに」

なんだか不安要素たくさんで、ポンちゃんがいなくなった時のような感覚が蘇る。

「なんだよ、その顔。俺は離れないって言っただろ」
「わかんないじゃん。2年も経ってるんだよ?そんなのわかんないじゃん」
「わかるだろ?でないと今まで一緒にいないだろ」
「22年一緒にいたってポンちゃんは離れたもん」
「それとこれとはまた違うだろ?」

ポンちゃんが完全に離れてしまう寂しさを思い出してウルウルしてくる。

結婚式が終わって新婚旅行が終わったら仕事を辞めたいずみんと一緒に向こうで暮らす。
あたしの一部が遠くへ行って幸せに暮らすらしい。

2年経ってもやっぱり寂しい。