「ユイ、俺はユイが本当にミノルを好きならそれなりに言わなきゃいけないこともある。だからちゃんとミノルに対する気持ちを聞きたい」

真剣に言われて、見えなくてもあたしとポンちゃんの雰囲気ぶち壊すミノルにムカついた。
普段可愛いなんて言ってくれないから超嬉しかったのに。

早く話して二人の時間を満喫しようと体勢を変えてちゃんと座った。

「ミノルがあたしを好きなのかどうかわからない」
「うん」
「毎日起こしに来て迎えに来てくれるけど、面倒だったらしないはずだから嫌いじゃないってのはわかる」
「そうだな」
「でもそれはポンちゃんもしてくれてたじゃん。忙しいのにしてくれてたじゃん」
「うん」
「だから、それはあたしが好きだからっていう理由にはならないの」
「なんで?」

なんでって今説明したじゃん!て言うと、あんまり納得してない感じで頷いた。

「ユイを恋愛感情として好きだからってところには至らないの?」
「それもね、あのバイクに乗せたのはあたしが初めてとか、あたしだから乗せたって言うけど、絶対嘘だもん…キス魔だし」

初対面から数々の記憶を思い浮かべて出てくるのはやっぱりミノルがキス魔だってこと。
初日、二日目、その後も色々お礼だとかなんだとか言って不意にキスされる。

「それも愛情表現だとは思わない?」
「愛情表現で誰にでも出来るなら相当軽くない?」

違う?と聞くと「そうくるかー」とポンちゃんは上を向いて考えた。

短く重い息を吐いて体勢を整えようとしたとき、ポンちゃんの視線が止まった。

「お姉さん、隣いい?」

どうしたの?と聞く前に声が聞こえて、その方を見ると話題の人物が立っていた。

「隣いい?」
「ヤダ」
「ヤダ言うな」

つめろ、と言うミノルに嫌だ!と抵抗しながらポンちゃんに助けを求める。
ポンちゃんは困った顔をして見てるだけ。

隣は嫌だから「ポンちゃんの隣に座る!」て言うと「座らせるわけないだろ」と言われて、最後には抱えられて移動させられた。
奥に座ったからもう逃げられない。

「ポンちゃん、なんでミノルがいるの」
「最初からいたけど」
「あんたに聞いてない!」
「ごめんな、そういう約束だったんだ」

どうやら最初から仕組まれたご飯だったらしい。
あたしはポンちゃんと二人で久しぶりにご飯食べれると思ってウキウキしてたのに。

「ポンちゃんひどいよ」
「悪かった。ちゃんと埋め合わせはするから」

ポンちゃんが謝るなら許すしかない。
黙ってミノルの隣に座り、ポンちゃんを見つめる。

「ユウホばっかり見つめんな」

右から目隠しされてムカつくから腕を殴ってやった。

「痛ぇし。てか、ユウホお前、幼なじみの壁越えてマジでコイツのこと可愛いって言っただろ」

そういうのやめれ、と言って通り掛かったお姉さんに席を移動したのとメニューをほしいと伝えた。
ポンちゃんは苦笑しながらあたしを見るし、ミノルは溜息吐いてあたしを見た。

「・・・なんなの」
二人に見られて居心地が悪い。
ミノルに関しては真後ろで最初から話を聞いてたみたいだし、あたしの気持ちを話したあとで居心地が悪いうえに気まずい。

ミノルが割り込んできて何も話さなくなったあたしはただポンちゃんを見てた。
どう責任をとってくれるんだというように。

「なぁ、ユウホ」

ミノルの声にあたしはポンちゃんから視線を外した。
ポンちゃんはミノルを見る。

「本当のこと言えば?」

眉間にシワが入るポンちゃんに不安が過ぎる。
隣のミノルはポンちゃんを見ていなかったのか持ってきてくれたメニューを見てる。

「それはここでは言えない」
「なんで?」
「それは、」
「ねぇ、何を言うの?なにがあるの?そんな深刻な話なの?」

なんだか真剣な雰囲気で不安になってポンちゃんとミノルを交互に見るけど答えてくれない。

「それより、ユイの俺への気持ちが先だな」

いつもの意地悪な笑顔。
以前はこの顔のあとにキスされた。
ちょっと下がると「警戒すんな」と笑われた。